白銀の川を隔てて、フィーンの国の北に位置する広大な国。ボーを併合するまではギルデア王国だった。東の大国アトーリスに対し、西の大国と呼ばれる。皇帝ダイロスの亡き母、ポーリーン妃は、アトーリス国王の妹で、両国は血縁関係にある。
夏は乾燥して雨が少なく、冬は温暖。蒼穹山脈の山麓と、蒼穹の川沿いには肥沃な土地が広がるが、そのほかは荒野が多かった。ボーを併合したことで、ギルデアは、ボーリアン海沿岸部と豊かな大地を手に入れたことになる。
国家の紋章は、権威と名誉を象徴する二本の剣、永遠を象徴する黄金の環。剣と環は王家の宝石サファイアを抱く。サファイアは栄光を表し、枠に連なるダイヤモンドの一番下にもきらめく。上部中央を飾るのは、ギルデアの冬の荒野を彩るマレンの花。崇高な精神を表している。
首都ギルフォスは、白大理石の丘に築かれた都で、丘の頂には、迷宮とも呼ばれる壮麗な石窟の王宮が、数百年以上にわたって掘り続けられている。内部は青と金の見事なタイルで装飾され、水晶やラピスラズリの粉、金粉を混ぜて焼き上げたタイルは、都の工房で作られている。その技は門外不出。サファイアの装飾も随所に施されている。
都の北、蒼穹山脈には、純度の高いサファイアの鉱脈がある。金の埋蔵量も豊富で、美しい金細工は、古くからギルデアが世界に誇る工芸品のひとつ。また、都の西には、西国と呼ばれる鍛冶の街がある。
蒼穹山脈の高原では、ギルデア固有の亜麻が育ち、その亜麻から採取される麻は、絹のような光沢とやわらかな風合いがある。長いローブを上衣として纏うギルデアの正装には、この特別な麻が用いられ、古くから王侯貴族に愛されてきた。
シャナイ山麓を中心に移動する遊牧民は、シャンピーとも呼ばれるギルデア山羊を家畜としている。ギルデア山羊の毛は大変良質で暖かく、外套やショールとして高値で取引されている。また、蒼穹山脈から流れる川は、滋養豊かな水をたたえた清流で、この川特有の藻で育った鱒は、非常に薫り高く、宮中に献上されている。そのほかの特産には、香辛料や、オレンジなど柑橘系の果物、オリーブ、ナッツ類がある。