「なにごとも始まりはひとつの思い、ひとつの理念からなのよ。そして、思いは行動につながるわ」 ~ 『盗賊と星の雫』より。銀の森で、リーヴに。
人間の王子とフィーンの王女のあいだに生まれた娘。フォーディルの村はずれ、銀の森で育つ。父から武術を学び、風雨の中でも暗闇でも、素早く正確に矢を射ることができる。森を訪れたリーヴとは、ひとめで親友に。兄のウィルナーとも心を通わせる。森を愛し、野生の馬と一心同体となって駆け回るが、人でもなくフィーンでもない存在として、誰にもいえない孤独を抱えている。
母親譲りの金色の髪と紫の瞳、淡く輝く肌をした、森の精のような娘。
アルディス暦2280年若草月(4月)生まれ
「闇が深ければ深いほど、光は輝きを放つわ。あなたは、その光よ」 ~ 『星水晶の歌』より。銀の森で、ルシタナに。
テス王国の少女。戦火の迫る故郷を逃れ、兄と母とともに最果ての国の母の実家サンザシ館に身を寄せる。行動的な兄と違って、内気で泣き虫だが、純粋で愛にあふれた存在。幼いころから暗示的な夢を見る。音楽家を目指す従兄のジョサに淡い恋心を抱く一方、ジョサの弟ハーシュも気にかかる。2歳の誕生日に父の友人から贈られた愛犬チェスターは、大切な友だち。
小柄で細く、青白い顔にはそばかすが散る。夢見るような榛(はしばみ)色の瞳と栗色の髪は、大好きな父親譲り。
アルディス暦2284年薄葉月(3月)生まれ
「あいにく、覚えてないな」 ~ 『星の羅針盤』『盗賊と星の雫』より。本当の名を問われて。
黒装束で身をかためた盗賊団の若き首領。孤児だったところを親方に拾われた。親方亡きあと、無駄な殺生はしないという哲学を継ぎ、同じく孤児で兄弟のように育った仲間たちと、富める者から奪い、貧しい者に分け与えている。ある襲撃で、古代の詩人アローディの希少本を手に入れたあと、ダイロスに奪われたフィーンの至宝、大いなるダイヤモンドの夢を見る。
長い黒髪。黒に近い濃い鳶色の瞳。背が高く精悍で、肌は小麦色に日焼けし、身のこなしは野生の猫のようにしなやか。
生年月日不明
「小さき者の無垢なる願いが、大きな流れを変えることもあるのです。世の中を変えてゆくのは、つねに人の心なのですから」 ~ 『星の羅針盤』より。隠遁の地で、ヨルセイスに。
遙かなるランゲフニーからこの世界に渡ってきたフィーンの預言者。ダイロスがサラファーンの星を奪ったあと、それを取り戻し影の力を止める者が現れると預言。オーベンレンガー王が参戦を決意すると、エレタナの駆け落ちを助けたかどで王宮を追放されたヨルセイスをともない、辺境の地へと去る。
金色の髪を持つフィーンの中で、唯一の銀髪。瞳は神秘的な薄い水色。
ランゲフニー生まれ。海の民エステラファーン一族の出身。
「愛し合う者たちは結ばれないと。そうではありませんか?」 ~ 『星水晶の歌』より。なぜランドリアとの駆け落ちを助けたかエレタナに聞かれて。
弓と横笛の名手。故郷ランゲフニーの海辺で、遠縁のレクストゥールに育てられ、両親を知らずに孤独な少年時代を過ごす。9歳の時、滅びゆくランゲフニーから、母の妹で叔母にあたる幼子エヴェインを連れ、この世界に逃げてきた。以来、彼女を守り育てたが、千年後、エヴェインが王に嫁いだことで、王の甥となる。王の末娘エレタナの駆け落ちを助けて王宮から追放される。
長いさらさらの金髪。薄い水色の瞳。
ランゲフニー生まれ。海の民エステラファーン一族の出身。
「わずかでも可能性があるならば、どんなことをもいとわぬ。三千年前、この世界に降りたったときに誓ったのだ。必ずや平和な世の中を築くと」 ~ 『星水晶の歌』より。ヨルセイスを人の世界へ派遣する際に。
フィーンの王。滅亡寸前の故郷ランゲフニーを脱する際、妻と幼い娘を失い、哀しみの王と呼ばれた。後に亡き妻の妹と結ばれ、四人の王子と三人の王女をもうける。サラファーンの星を奪われると、密かに何度かギルデアに遣いを送って返還を求めたが、ダイロスはことごとく無視。苦渋の決断で参戦に踏み切る。
金髪のフィーンの中で唯一の黒髪で、七色に変わる瞳を持つ。
ランゲフニー生まれ。森の民サラファーン一族の出身。
「変わっていないのね、ヨルセイス。このテラスで夜明けを待つのが好きなところ」 ~ 『石と星の夜』より。王宮のテラスで、ヨルセイスに。
オーベンレンガーの二度目の妻。第2部から登場。ランゲフニーが滅びる直前、海の民の末の王女として生まれる。ヨルセイスに連れられ、ランゲフニーを脱出。千年ののち、オーベンレンガー王の妻となる。王の亡き妻は、エヴェインの姉で、夫が折にふれ姉と亡き子を想うのを知りつつ、寂しさを胸の奥に秘める。ヨルセイスがエレタナの駆け落ちを手引きしたあとも、彼への信頼は変わらない。
絹糸のような金色の髪。瞳は美しい瑠璃色に輝く。
ランゲフニー生まれ。海の民エステラファーン一族の出身。
「レクストゥールは偽りの預言など決して口にしません! よいですか、元帥閣下、あなたがたのやり方は完全に間違っています。レクストゥールはその英雄を探すべきだとはひとこともいっていません!」 ~ 『石と星の夜』より。各国の代表との会議で。
フィーンの末の王子。第2部から登場。エルディラーヌの参戦後、出征した兄たちをうらやましく思い、自分も父に認められたいと願っている。その父から、戦争の行方を左右する会議に派遣され、〈氷河〉計画を阻止するよう命じられる。初めての人の世界へ意気揚々と旅立つが……。
金色の髪に、翡翠色の瞳を持つ、茶目っ気たっぷりの王子。
アルディス暦2220年弓月(11月)生まれ。
「そんなばかなことがあるか。わたしの頭は酒が入った方が冴えるぞ」 ~ 『星水晶の歌』より。通信基地が禁酒なのは、仕事に差し支えるためだとの話に。
ノアッド王立病院の医師。若い医師から白鬚先生と呼ばれて怖れられている。サンザシ館の先代ハンスとは、幼なじみで親友だった。そのハンスとともに、フィーンの国から駆け落ちしてきたエレタナ王女と隣国の王子を銀の森にかくまい、いまもなにかと助けている。
長い白髪に、長い鬚。太い白い眉。青い目は少し灰色がかっており、背が高くがっしりとして、かくしゃくとしている。
アルディス暦2225年麦穂月(6月)生まれ
「誰かに伝えたいことがあったら、その機会を逃さないで。なぜって、それは二度と来ないかもしれないから」 ~ 『盗賊と星の雫』より。フォーディル村の墓地で、リーヴに。
丘の上の一軒家に住む未亡人。行方不明の息子トゥーリーが、いつか帰ってくると信じて、待ち続けている。瓦職人だった夫を早くに亡くし、フォーディルの風景をタペストリーに織りながら、ささやかな暮らしを大切にしている。そんな夫人をそっと見守るのは、トゥーリーがいなくなったあとふらりと現れた黒猫のアイラ。
明るい金髪に、明るい青い瞳。やさしい笑いじわが印象的。
アルディス暦2254年機織月(12月)生まれ
「もしかしたら、ぼくが行くことで助かる命があるかもしれない。そんなふうに思うのは不遜なことかもしれないけれど、そう思えるのにここにじっとしていることは、ぼくにはできないんだよ」 ~ 『星の羅針盤』より。戦地に発つ朝、見送りのスピリに。
バーナード老先生のひとり息子で、心やさしい村の医師。幼なじみのエリーとは、結婚したばかり。弦楽器を奏で、エリーと二重奏を楽しむことも。外科の腕は大学病院の医師に勝るとも劣らず、村人から慕われているが、戦火が激しくなると、医療団の一員として戦場に発つことを決意。
さらさらの金髪に青い瞳。すらりとした長身。
アルディス暦2267年渡り月(9月)生まれ
「わたし、待つのに飽きてしまったの。小さいころと一緒ね。ずっと彼のあとをついてまわってたっけ」 ~ 『星水晶の歌』より。サンザシ館でスピリに。
ランス先生の妻。幼いころから七つ年上の彼に恋をして、始終あとをついて歩いていた。その恋は回り道をして、クレナで教師として働いたあと、ようやく実る。診療所を手伝いながら、幸せな新婚生活を送っていたが、ランス先生が戦場に発つことに……。陽気でよく笑うが、3歳のとき、庭で一緒に遊んでいた弟が行方不明になった過去がある。
明るい金髪に大きな青い瞳。小柄で、古代の詩人アローディを愛するチャーミングな女性。
アルディス暦2274年渡り月(9月)生まれ
「気づいてないのかい? おまえのなかには、強い魂が宿っているんだよ」 ~ 『星の羅針盤』より。戦場に発つ前日、娘のリーヴに。
リーヴとウィルナーの父。テス王国の画家。絵を描きながら世界を放浪してリーヴェインを訪れ、フェルーシアと出逢って結婚。彼女をともなって故郷に帰る。平和を愛し、画家が手にするのは絵筆であり、剣ではないとの信条を持ち、まわりから卑怯者とののしられても、決して入隊しなかったが、ギルデア軍が子どもたちを虐殺したことで、気持ちを変える。
夢見るような榛色の瞳、豊かな栗色の髪。長身で引き締まった身体つき。
アルディス暦2254年若草月(4月)生まれ
「フェルーシア。きみにもう一度会えるとは、夢にも思わなかったよ。最後に見たときと少しも変わってない」 ~ 『星の羅針盤』より。サンザシ館の食卓で。
ダンとフェルーシアの従弟。女性と船にめっぽう弱く、三十過ぎても気ままな独身。音楽院生のとき両親を失う。素行不良で放校になり、王立学士院に入ったあと通信員に。諜報員に引き抜かれるが、裏の顔を持つ仕事に嫌気がさして辞職。ようやく女子校の教師に落ち着くも、女生徒と問題を起こしてクビに。そんな折、昔の上司に拾われて通信員に帰り咲く。
黒髪と長身は父方のディール家から、やさしい青い瞳は母方から受け継ぐ。
アルディス暦2263年竪琴月(7月)生まれ
「あなたが真夜中にひとりでお茶を淹れるのは、スピリが銀器を磨くのと同じ。なにか心にかかっていることがあるんじゃない?」 ~ 『石と星の夜』より。サンザシ館でロンドロンドに。
ダンの妹。生まれたときに母を失い、父と兄、家政婦のスピリに見守られ、のびのび育つ。村一番の跳ねっ返りで、なにかと騒動を起こした。母親譲りの美しさで村中の若者をとりこにしたが、異国の画家と恋に落ち、16歳で結婚。彼の故国へ渡るも、戦争が勃発。出征した夫に心を残しながら、ふたりの子を連れ、20年振りに帰国する。
ディール家の黒髪と黒い瞳を受け継ぎ、いまも娘時代の面影を残す。
アルディス暦2262年星降月(1月)生まれ
「エメラインが生きていたころは、ハーシュももう少しのびのびしていた。話もしたし、時おり笑顔も見せたものだよ。あの子は、笑うと母親によく似ていた」 ~ 『星の羅針盤』より。妹のフェルーシアに。
サンザシ館の当主。9歳のとき妹の出産で母を失う。指揮者である父の期待を一身に背負って音楽家になるが、ある日失踪。その後、新妻レティをともなって帰郷するが、レティはジョサの出産で命を落とし、再婚したエメラインも事故で他界。残されたエメラインの連れ子ハーシュは、心を閉ざしてしまう。
ディール家の長身と黒髪、黒い瞳を受け継ぐ。40代のいま、髪はロマンスグレイに。
アルディス暦2252年石榴月(9月)生まれ
「可愛い妹君の忘れ形見があんな独裁者に成り下がったのでは、アトーリス国王もどんなにお嘆きでしょう。だいたい、自らを皇帝と名乗るなんて! あれがわたしの息子だったら、お尻をこっぴどく叩いてやるところですよ」 ~ 『星の羅針盤』より。サンザシ館で、ギルデア皇帝のダイロスを評して。
ダンとフェルーシアの母親の死後、サンザシ館の当主であったハンスに仕え、三十年以上にわたってディール家を支えてきた献身的な家政婦。気になることや悩み事があると、銀器を片っ端から磨く。男子厨房に入るべからずとの信念を持ち、昔気質で、現代文明には懐疑的。村の老医師バーナード・ランスとは、しばしば舌戦を繰り広げる。
ひっつめに結った真っ白な髪。目は灰色がかった茶色。小柄で痩身。年齢不詳。
「力を持つ者には責任がある。オーベンレンガーはそれを知っていた。愚かなのは、過った使い方をする者だ」 ~ 『星水晶の歌』より。ギルデアの王宮でダイロスに。
アトーリスの第二王子。17歳のとき訪れたフィーンの国でエレタナ王女と恋に落ち、リーヴェインへ逃亡。表向きは海で遭難したことに。妻を愛する一方、祖国への思いも断ち切れず、側近のステランと通じ、諸国を放浪して世の情勢を探っている。ダイロスとは従兄弟同士で、彼が起こした戦争と、祖国が進める〈氷河〉計画に深い懸念を抱いている。
長い黒髪に、強い光を湛えた黒い瞳、日焼けした精悍な顔立ち。
アルディス暦2262年雪降月(2月)生まれ
「たとえフィーンがこの世界に渡ってこなかったとしても、わたしはここに生まれて、どこかであなたと出逢った……」 ~ 『盗賊と星の雫』より。銀の森で、夫のランドリアに。
フィーンの王オーベンレンガーの末娘。薬草に詳しく、すぐれた癒し手。輝ける生命の源サラファーンの星が奪われたため、純粋なフィーンとしては地上で最後の存在で、16歳のとき、父が招集した大会議で人間の王子ランドリアと恋に落ち、人の世界へ逃亡。サンザシ館のハンスと村の医師に助けられ、いまは娘のルシタナと銀の森で暮らしている。
金髪に濃い紫の瞳。肌も髪も淡い光を帯び、美しく輝いている。
アルディス暦2263年星降月(1月)生まれ
「子どものころからずっと戦士になる日を待っていた。世の中のために自分ができることは、戦うことだと思ったんだ」 ~ 『星の羅針盤』より。銀の森で、ルシタナに。
リーヴの兄。つねに前向きで、あふれんばかりのエネルギーは、姿を現すだけで、一気にその場の雰囲気を変えるほど。喧嘩っ早く、剣術と馬術の腕は大人顔負け。年を偽って戦地に赴き、負傷して帰還。左足の麻痺は優秀な軍医にも見放されたが、希望を捨てず、戦線復帰すべく歩行訓練を続けている。
黒髪に黒い瞳、長身で引き締まった身体つき。きりりとして大人びた顔立ちだが、笑うと十代の少年の素顔がのぞく。
アルディス暦2281年若葉月(4月)生まれ
「ほっといてくれよ! 仲を取り持たれるのは、もうたくさんだ」 ~ 『星の羅針盤』より。義理の父との仲裁に入ろうとしたジョサに。
ダンの次男で、後妻エメラインの連れ子。実の父とは幼いころ死別。サンザシ館になじみ、ダンとジョサに打ち解けかけた矢先、事故で母を失う。才能あふれるジョサの前で影が薄く、自分に自信を持つことができない。気にかけてくれるリーヴにも素直になれず、冷たく接してしまうが、ある事件をきっかけに、ウィルナーとは、よき友に。天性の乗り手で、愛馬とは深い絆で結ばれている。
暗い金髪に、夜明けの空のような澄んだ藍色の瞳。
アルディス暦2283年星降月(1月)生まれ
「音楽や絵画や詩には、純粋な美が、純粋な喜びがあふれている――世界から美しさが失われつつあるいま、そうしたものはいっそう大切で必要なんだ」 ~ 『星の羅針盤』より。リーヴと白樺の木立を散策しながら。
ダンの長男。音楽院生。リーヴェインの鍵盤楽器フレシートの天才的な奏者で、将来を嘱望される。夢は宮廷作曲家。フォーディルの自然を愛するやさしい少年で、明るく気さくだが、いったん作曲にかかると、時間も食事も忘れ、あらゆる約束をすっぽかす。義理の弟ハーシュが父親と折り合いが悪いことに心を痛めている。
黒髪に情熱的な黒い瞳。ほっそりしなやかな身体つき。
アルディス暦2281年渡り月(9月)生まれ
「昔の仕事に戻る気はないか? 腕のいいのが必要なんだ」 ~ 『星の羅針盤』より。久しぶりの再会で旧友ロンドロンドに。
ソーン卿の次男で、ロンドロンドの友人。表の顔はクレナ通信本部の通信員。裏の顔はリーヴェイン王室情報部の精鋭、第七班の諜報員で、各国を飛び回っている。父親のソーン卿は、第七班の長。同じく第七班の密かな一員ディヴァレアン王子は、学生時代の同級生。いつも世の中をはすに見て、クールで剛胆。三十なかばで独身。本人は、第一夫人は酒、第二夫人は海だといっている。
長身で、砂色の髪。青い瞳。
アルディス暦2263年薄葉月(3月)生まれ
「世継ぎとしていつまでも独身なのはいかがなものかと申し上げたら、第二王子が子宝に恵まれているから心配ないと仰せられ、愚息とその親友を引き合いに出されたよ。まったく悪い見本がそばにいたものだ」 ~ 『星水晶の歌』より。都での宴席でディヴァレアン王子のことを評して。
ハルの父。表の顔はクレナ通信本部の局長。裏の顔は、リーヴェイン王室情報部、第七班の長(おさ)。国家のため、世界平和のためには、どんな犠牲もいとわぬ覚悟と冷静さ、冷徹さを持っている。
長身でがっしりした体格。砂色の髪に濃い鬚。青い瞳は鷹のように鋭い。
アルディス暦2238年石榴月(8月)生まれ
「ジョサが最終審査に来たら、面接官の中に紛れ込むよ。わたしは宮廷楽団の理事だからね」 ~ 『盗賊と星の雫』より。都でロンドロンドに。
リーヴェインの第一王子。『石と星の夜』から登場。
病身の父王に代わって国政の大半をつかさどっている。リーヴェイン王室情報部、第七班の隠れたメンバーで、同僚のハルは学生時代からの友人。気さくな人柄で、広く国民に親しまれている。音楽を愛し、お忍びでジョサの演奏会に行ったことも。ハルとロンドロンドと同じく独身。
濃い茶色の髪に茶色の瞳。背は高く、がっしりと筋肉質。
アルディス暦2263年林檎月(5月)生まれ
「ぼく剣術も馬術もうんと上手になったよ。弓だって。もう一人前に戦えるよ」 ~ 『星水晶の歌』より。ヨルセイスに。
イルバーンの古都、レマンの公爵のひとり息子。第2部から登場。公爵家には、ボーリアン海の真珠で縁取られた紫サファイアのブローチが古くから伝わり、正装時に一族が纏うのは、長いローブに悠久織りの金糸のケープ。フィーンの預言者が、ダイロスの影の力を止める者は、高貴で、金の衣を纏い、紫の石を持つといったことから、命を狙われることに。危険を知らされた公爵は、幼い息子を悠久山脈の知人に託すが……。
少し金色がかった茶色い髪に、明るい茶色の瞳。
アルディス歴2291年渡り月(9月)生まれ
「なにをもって破滅と呼ぶのだ? わたしはどんな災いも破滅も怖れはしない」 ~ 『盗賊と星の雫』より。恩師ガリウスに。
ギルデア帝国皇帝。父王の急逝後、兄のサイロスも謎の死を遂げ、24歳の若さで王位に。まばゆいばかりの美貌とカリスマ性で、国民から圧倒的な支持を得る。ほどなく、隣国に侵攻。フィーンから奪ったダイヤモンドでガリウスに魔剣を造らせ、不死身の騎士を生みだすと、瞬く間に隣国を併合。ギルデア帝国を築き、戦火を広げる。亡き母はアトーリス国王の妹で、ランドリアとは従兄弟同士。ランドリアがギルデアに遊学した際、親交を深めた。
古代彫刻のように均整がとれた美しい身体。金髪碧眼で絶世の美男。瞳の青は、ギルデアを象徴する宝石サファイアの青。
アルディス歴2254年若草月(4月)生まれ
「夢に注意を払うことだ。それはさまざまなことを教えてくれよう。おまえさん自身の過去や未来についても」 ~ 『盗賊と星の雫』より。ジョーに。
剣の匠で無二の錬金術師。魔術を操るともいわれ、若くしてギルフォスの王宮に呼ばれる。あらゆる学問と武術に通じ、相次いで生まれた二人の王子、サイロスとダイロスの師匠となった。後年、ダイロスに力を貸し、フィーンの国から奪ってきたダイヤモンドを切り出して、恐ろしい魔力を持つ光の剣を生みだす。その後ふっつりと消息を絶ち、ダイロスに殺されたと噂されるが……。
白髪に琥珀色の瞳。長身。
アルディス歴2231年星降月(1月)生まれ
「〈氷河〉こそ唯一無二の切り札。その切り札を手放すくらいなら、いっそ、この世界など滅び去るがよい!」 ~ 『星水晶の歌』より。ある極秘会見の場で、ステランに。
ランドリアの父。第2部から登場。妹ポーリーンが、かつてギルデアに嫁いだことで、ギルデアとは長らく友好関係にあった。現在のギルデア皇帝ダイロスは、妹ポーリーンの次男で、血のつながった甥にあたる。そのダイロスに勝利するため、恐るべき兵器〈氷河〉の開発に心血を注いでいる。
黒かった髪はいまや白髪に変わったが、黒い瞳は若いときより鋭さを増している。肩はがっしりと広く、堂々とした体躯の持ち主。
アルディス暦2234年弓月(11月)生まれ
「なんの話かわからないな。それより、どういうわけで墓の中から甦った?」 ~ 『星の羅針盤』より。国境の酒場で、ランドリアに。
アトーリス王立陸軍近衛騎兵中、唯一、剣と弓で二重武装した精鋭〈白き竜〉の隊長。少年時代、ランドリア王子やステランと同じ師匠のもとで武術の鍛錬に励んだ。優れた弓の腕前から、〈ハンター〉の異名をとる。陸軍入隊後、王室パレードを護衛中に暴漢から王妃を守った国民的英雄。〈白き竜〉に引き抜かれて隊長への道を駆け上がり、竜の彫刻を施した愛弓ユークリムゾンで特使の暗殺犯を倒すが……。
濃い茶色の髪、茶色の瞳。中肉中背。
アルディス暦2262年雪降月(2月)生まれ。
「パーセロー。ステランはあなたのこと、誰よりも信頼しているわ。あの人、時どきひどく無茶するの。今度の旅は一緒じゃないのはわかっているけど、そばにいるときは、お願い、目を離さないでね」 ~ 『石と星の夜』より。昼食に訪れたパーセローに。
ステランの妻。第2部から登場。左足に障害があり、そのことと家柄がそぐわぬことで、ステランの父から結婚を反対された。おっとりしているが、芯は強く、親友のニッキに負けず劣らず食いしん坊。結婚七年目にして授かった子どもの誕生を、心待ちにしている。
小柄で、波うつ黒髪とやさしい黒い瞳の持ち主。
アルディス暦2271年星降月(1月)生まれ。
「必ず突きとめます。〈イリュリア〉の名に懸けて」 ~ 『石と星の夜』より。ヴェルゼン長官の執務室で、長官に。
王室情報部〈イリュリア〉の諜報員。ランドリアの幼なじみで腹心。ランドリアについて二年間ギルデアに遊学し、帰国後、ともに海軍に入隊。エルディラーヌで大会議が開かれた際には、ランドリアの駆け落ちを手引きし、いまも熱い友情で結ばれている。父の反対を押し切って、愛する女性と結婚。国王に忠誠を誓った身ながら、王が進める〈氷河〉計画に深い懸念を抱いている。
赤みがかった金髪に、淡い水色の瞳。小柄だが、ひきしまった身体をしている。
アルディス暦2263年若葉月(4月)生まれ
「あの人は少年みたいな目をしていました。純粋で、きらきら輝く目を。でも、この前会ったときは、まるで別人でした……」 ~ 『石と星の夜』より。ステランとパーセローの聞き込みで。
白樺亭で働く娘。第2部から登場。エリス卿暗殺事件の証人。過去に一度だけ出逢ったヴァナック騎士長に、密かな想いを抱いている。母親の再婚相手から虐待され、叔父夫婦の営む宿屋、白樺亭に身を寄せている。心の友は、愛犬ウィスパー。
栗色の髪。澄んだ榛色の瞳。小柄でぽっちゃりした体型。笑うと薔薇色のほおに大きなえくぼが浮かぶ。
アルディス暦2281年麦穂月(6月)生まれ。
「パーセローはわたしの兄。〈イリュリア〉なの。いつも任務優先で、わたしの結婚式もすっぽかした。父親代わりだのに、とんだ兄貴よね」 ~ 『星水晶の歌』より。看護をしながら、負傷者に。
パーセローの妹でマリアの親友。第2部から登場。陸軍病院の看護師。火のような性格で、猪突猛進型。間違っていると思えば、病院長や軍医に対しても臆せず楯突く。昔から、男子を殴り倒したり、燃えさかる建物から子猫を救ったりと、勇敢かつ無謀。人一倍食いしん坊で、人一倍ほれっぽく、すぐに恋に落ちる。
金髪の巻き毛に澄んだ明るい茶色の瞳。すこぶる細く、ほとんどの男性より背が高い。
アルディス暦2272年弓月(11月)生まれ。
「なんでおまえがそんなにもてる?(いったい俺とどこが違う? にやけた面か、太い二の腕か、はたまたそのふさふさした髪か?)あー、俺にもっと髪があったら!」 ~ 『石と星の夜』より。酒場で同僚ミコルトに。
〈イリュリア〉の一員。第2部から登場。首都警備隊出身で〈イリュリア〉一の健脚の持ち主。聞き込みのしつこさでも部内トップで、捜査が真実に近づいたり、陰謀の匂いを感じとったりすると、頭の後ろと胃の裏側がちりちりする。暗殺事件の証人サラにひと目ぼれしてしまい……。
後退し始めた金髪の巻き毛。おどけたような表情を浮かべる澄んだ茶色の瞳。ひょろりとした長身だが、体力は半端ではない。
アルディス暦2270年若草月(4月)生まれ
「それ以上自分を責めるな。これはきみのためだけにいっているのではない。〈イリュリア〉のため、国家のためだ。過剰な責任感は、心の重荷となって捜査の勘を鈍らせる」 ~ 『星水晶の歌』より。大晦日の晩餐のあと、ステランに。
アトーリス王室情報部〈イリュリア〉の長(おさ)。第2部から登場。海軍時代は鬼のヴェルゼンと呼ばれていた。仕事には厳しいが、部下たちからは〈親父さん〉の通称で慕われている。ステランの父、故ワイス卿とは長年の親友だった。ステランの名付け親で、ステランを我が子のように思っている。
黒髪、黒い瞳で、鬚はすっきりとそっており、中肉中背。
アルディス暦2240年渡り月(9月)生まれ。
「俺たちは国王に忠誠を誓った。国のためならいつでも命を投げ出すと。だが、世のためには? おまえはこの世のために死ねるか?」 ~ 『石と星の夜』より。極秘会議の開かれる館で、ステランに。
〈イリュリア〉の諜報員。陸軍時代、ヴェルゼン長官から引き抜かれた。エリス卿暗殺事件特捜班の班長(チーフ)。第2部から登場。どんなときでも冷静沈着で、ヴェルゼンが最も信頼を置く部下。仲間たちからも慕われている。暗い過去を持つが、個人的なことは親しい仲間にも語らない。
金髪で、青い瞳は深い悲しみを湛えている。長身でスリム。左手の甲に三日月形の傷痕がある。
アルディス暦2256年渡り月(9月)生まれ。
「惚れた男を破滅に追いやった奴に惚れる女はいない。一途な女は、たとえ惚れた相手が悪魔でも、最後まで惚れぬく。そういうもんだぜ」 ~ 『石と星の夜』より。同僚のパーセローに。
〈イリュリア〉の一員。パーセローの同期で第2部から登場。国境警備隊出身。陽気でよく食べ、声も態度も大きいが、酒は一滴も飲めない。デザートに入っている少量のアルコールで、たちまち爆睡。抜群の記憶力の持ち主で、一度行っただけの酒場の女でも決して名前を間違えない。雑踏でも大勢の会話を聞き分け、聴覚も犬並み。
黒髪に黒い瞳、濃い鬚の、どこまでも濃い男。小柄だがマッチョで、女性にもてる。
アルディス暦2269年収穫月(10月)生まれ
「いまや、事態は風雲急を告げておりますぞ。光の剣を手にして影の力を止めるという英雄は、本当にいるのですかな? 詭弁に過ぎないのではありませんか?」 ~ 『石と星の夜』より。各国代表との会議の席で、フィーンの王子に。
アトーリスの陸軍元帥。第2部から登場。国王からの信頼は誰よりも厚く、〈氷河〉計画の責任者。目的を果たすためには、強引で卑劣な手段をもいとわない。海軍出身の〈イリュリア〉長官ヴェルゼンとは、性格も相容れず、しばしば敵対する。
白髪で頭頂部は薄い。中背だが、恰幅がよく、威圧感がある。瞳は薄い褐色で細く鋭い。
アルディス暦2234年収穫月(10月)生まれ。
「そのような力は大きな代償をともないます。それは、剣を切り出して放たれたダイヤモンドの力を遙かに凌駕し、一歩間違えば、世界を滅ぼしかねません」 ~ 『石と星の夜』より。王宮での晩餐会の回想。
テス王国出身の鉱物学者。未知の鉱石から、現在の通信技術を発明した。その鉱石は、博士の名を取りセレインヒースと命名される。戦火迫る故国から、アトーリスへ亡命し、ひとつの街を一瞬にして灰燼にする〈氷河〉を開発。その技術のすべてを知る唯一の男。恐ろしい兵器を生みだしたことを後悔し、リーヴェインへ逃亡しようとするが……。
小柄で細身。白髪に灰褐色の瞳。
アルディス暦2230年星降月(1月)生まれ
「ジョー。俺にもしものことがあったら、あれを彼女に渡してくれないか」 ~ 『石と星の夜』より。根城の洞窟で、ジョーに。
ジョーの仲間。表の顔は通信基地の伝令。裏の顔は仕事に関する情報を集めるジョーの右腕。並外れた手腕で、伝説の宝石〈エステラの瞳〉が、とある貴族のもとにあることを突きとめる。その強奪を最後に、足を洗おうと決意。堅気になったあかつきには、根城に隠した大きなエメラルドを、恋人に贈ろうと思っている。
やや癖のある明るい栗色の髪に、明るい茶色の瞳。小柄で、まだあどけなさの残る少年のような顔立ちをしている。
生年月日不明
「人間など守るには値しない。この前の坊主もあの男も、精々生きて数十年。この雪の一片と同じ。瞬く間に消える。おまえも人と同じ哀れな存在に過ぎぬ。千に刻まれれば、いともあえなく息絶える」 ~ 『星水晶の歌』ヨルセイスと対峙した際の、リーダーの台詞。
ダイロスに永遠の忠誠を誓い、光の剣の力で不死の命を得た存在。不死を得ることと引き替えに、魂と影を失ったといわれている。黒魔術で生みだされた魔犬を従えている者もいる。最初に永遠の命を得た九名は、死の従者と呼ばれ、近衛兵から選ばれた精鋭中の精鋭。唯一の弱点は心臓。貫かれると、ほどなくミイラになり、灰と化す。
「ヨー」 ~ 『星水晶の歌』ヨハンデリ夫人の回想より。ヨーとは父の名で、言葉の遅かったトゥーリーが、ただひとついえた言葉。
行方不明の少年。ヨハンデリ夫人の息子。2歳のとき、姉のエリーと庭で遊んでいて、神隠しにあったように忽然と姿を消す。トゥーリーが行方不明になった日、遠い異国ギルデアでは、ダイロスが戴冠。その美貌とカリスマ性に、ギルデア国民は熱狂したと伝えられている。
黒髪に黒い瞳、林檎のようなほおをした愛らしい子で、ヨハンデリ夫人の家には、村を訪れたテスの画家(のちのリーヴの父)が描いた絵が残っている。
アルディス暦2275年渡り月(9月)生まれ
「今度でかいことをする。見てな、連中の度肝を抜いてやるよ」 ~ 『石と星の夜』娼館で、入れあげていた娘に。
謎の暗殺者。ギルデアから派遣された和平使節エリス卿を、歓迎式典の場で、鐘楼から狙撃。その場でヴァナック騎士長に射落とされる。弓とナイフ使いの名手。都に現れたのは、事件の二か月前で、参戦を訴えるビラを配る姿を目撃されている。流ちょうな都言葉で演説をしていたが、酒場では片隅に座り、外国訛りがあったとの証言があり、それ以前のことは、生まれも育ちも経歴も、いっさいわかっていない。
浅黒く、髪と目は茶色。小柄で痩せている。
生年月日不明
ギルデア帝国における、数少ない穏健派。ダイロスの遠縁にあたり、かつてダイロスがボー王国に侵攻した際、唯一非難の声を上げた人物として知られる。その後も、ギルデアの行く末に深い憂慮を抱き、停戦を訴え続け、ダイロスから疎まれているとの噂があった。連合国との和平交渉に望むべく、ギルデアの特使として、そのダイロスからアトーリス王国へと派遣されるが……。
明るい茶色の髪に灰色の瞳。顎鬚をたくわえた穏やかな丸顔は、温厚な人柄そのまま。中背で恰幅がよい。
アルディス歴2235年11月(弓月)生まれ。